『価値』というものは、一枚の紙のようなもの、あるいは認定証のようなものに思える。ある時代ある場所で、ある事なりある物にペタッと貼られるものだ。もちろん貼られたり、はがされたりを繰り返している。そういう意味では、流れて行くものであると言える。
我々が、見つけださなければならないのは、そういった貼ったりはがされたりするものとしての『価値』のふるまいの仕組みである。つまり、『メタ価値』とでもいうべきものだ。
物そのもの、あるいは事それ自体を見ていても、『メタ価値』を認識することはできない。つまり形を追ってはいけないということ。例えばテレビのデザインをするのに見なければいけないのは、それが置かれる環境であり、使われる状況であり、使う人である。テレビをデザインするということは、テレビの形を作ることではなく、テレビとそれが存在するすべてを含んだ場との新しくて、気持ちのよい『関係(Interaction)』を見つけだすことなのだ。
そのように、『価値』というものに対して直に面と向かわなければならないというのが、デザイナーとしての職能だと私は考える。また、そのように考えると、そのような職種についている人というのはデザイナー以外にないのではないかと思える。一歩下がっても、デザイナーがそこに一番近い場所にいるのではないだろうか。
(89年頃)
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