ここでいうソフトウェアのデザインとは、そのソフトウェアがどういう機能を持ち、またその機能はどのように働くかを設計することである。これまで、そういう職業がなかったかと言えば、強いて言えば日本では、おそらく SE(Systems Engineer) と呼ばれる人達がこの仕事を行っていたのであろうと思う。しかし、最近のパーソナルコンピュータでの米国産の優れたソフトウェアのクレジットを見ていると、
Design by ...
Program by ...
という形で入っていることが多い。ここにおいてデザインといっている部分で行われている作業というか仕事は、日本で言うところのSEがやっていることとはずいぶん概念が異なっているのではないだろうか。
ソフトウェアデザイナーとSEの違いを感覚的に捉えれば、今までにない新しい問題の切り口を見つけだすことによってより革新的にアイデア発想的に、問題の解決に迫っているかどうかと行った点であろうか。
おそらく、この違いのもとはソフトウェアの設計の出発点の違いによるものであろうと思う。この設計の原点となっているものは、極端に言ってしまえば人間であるか、システムであるかということではないだろうか。現在日本では、ソフトウェアのプログラマーが経験を積んでSEになる、というのが一般的である。したがって、ひとことで言うとSEというのはシステムの事情に通じている人ということがいえる。
しかし、もう一方ではもっと人間よりの発想というのが存在してもよいと思う。人間とは、作業する人でありシステムを使う人である。人間を見て、ソフトウェアをデザインしなければならない。いわゆるデザイナー(設計者一般の意味でなく)は、人を見てきた職能であるといってよいと思う。だからこそ今、デザイナーはソフトウェアをデザインしなければならない。
(89年頃)
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