1990年5月1日火曜日

ハイパーメディアについて

ハイパーメディアについて(T美大の講師の原稿)
近年のコンピュータを中心とする情報機器の様々な発展の中で、とりわけホットな課題としてハイパーメディアという概念がある。逐語的な解釈としてはメディアを越えたメディアということになるが、ハイパーメディアは次のような特徴的な点を合わせ持っているものとして一般に認知されている。

1. ノンシークエンシャル―――情報の関係の自由度
これまでの特に紙を中心とするメディアに対してノンシークエンシャルな情報を扱える。すなわち情報は一次元的に配置されるのではなく、時にはツリー構造的、ネットワーク的に配置される。また情報間の関係は利用者が自由に決定できることも重要な要素である。
(追加920117)ここにおいて、関係そのものが情報である。またこの関係情報は、内容そのものを第一次の情報とすれば全体の中ではメタ情報となる。

2. インターラクティブ―――情報の参照の自由度
特にハイパーメディアが目指すのは利用者の自由な情報の参照であるが、ここで問われるのが機械と利用者のインターラクティブな関係である。すなわち時々刻々変化する利用者の要求を機械がうけとめ、適切な判断をして情報を呈示できることである。

3. マルチメディア化―――情報の表現の自由度
通常、同時に文字情報に加えてビジュアル(絵、動画など)情報、サウンド情報なども扱うことができる。つまり、表現的にも大きな自由度を持つということである。

これらは情報の載るメディアの自由度を拡大することによって利用の深さ、広さを増してゆこうとすることと言い換えることができる。従って、次のような図式が成り立つ。

ノンシークエンシャル ――― 情報の関係の自由度
インターラクティブ  ――― 情報の参照の自由度
マルチメディア化   ――― 情報の表現の自由度

メディアに様々な自由度を持たせようというのは利用者側としては当然の自然な欲求である。しかしこういった指向の中で問題になってくるのが、情報をどう構成し提示するかである。利用者の利用の自由度が増し、表現的にも様々な可能性をもってくるに従って、そして見る側に大きな自由は与えられたことによって、それを作る側に多大な負荷がかかってくる。メディアが進化すれば、そこに載せる情報を作ることも進化しなければならない。このような局面の中で情報構成におけるデザインの役割が大きなものであることは自明のことといってよいと思うが、また同時にこの問題に打つべき手段、理論がデザイナー側にほとんどなく、問題を認識したに過ぎない地点が現在であるように感じる。


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