先週デザイン学会があったが、その中で新しい「デザイン学」のアプローチが提示された。それはデザインの内的な進展というより、それまでデザインと直接に関係を持たなかった工学など分野との学際を目差しているものと、私は捉えた。とりあえず自分としてはこの活動を支持したいと思っている。
デザインと工学は物を作るという現場を共有しているにもかかわらず、これまではあまりその関係性を正面から取り上げては来なかったように感じる。自分の知るかぎりでは、一部の先端の工学者が先験的にデザインの本質的な意味と融合の必要性を説いてはいたが、実質的な学際は存在しなかったのではないかと思う。
今回のデザイン学へのアプローチは、そういうことを目指しているのだと私は理解した。
自分なりの理解としては、次のような流れになっている。
まず、工学は自然科学を基礎としている。そして自然科学の方法論の基本は事象の分析(Analysis)にある。したがって工学もそのもっとも深いところで「分析」を活動の基礎においている。少なくとも自分にはそのように見える。ちなみに自然科学の母は数学であり、数学の母は論理学ということになるのであろう。したがって工学における物づくりとは、分析に基づく効率性の高い無駄のない機能性あるいはタスク遂行の実現ということになるのだと思う。(たぶんこれは簡単すぎる解釈で、実際にはもっといろいろな立場があることだと思う、ということで先に進める。)
デザインは芸術を基礎としている。(、と述べたいところだが、デザインに身を浸す人間としては、それは一面的なとらえ方だが、と一言いいおいてまた話しを先に進めてしまう。)芸術の本尊は、ものを作る、あるいは何かを表現するということである。これを分析に対比させて統合(Synthesis)と呼んでいる。ここでの作られ方、表現の根本にあるのは、作られたものを見たり受け取ったりする側の「人間」としての「受取り」である。(ここは我ながら重要な指摘であると思う。)
21世紀初頭の現代における物づくりは、たとえば仕事のための道具のようなものであっても、効率性と機能性だけでは語れないところに来ている。特に昨今のコンピュータ関連の道具達は、道具のありかた自体が人間に近づいている。象徴的な意味ではロボットはもちろんそうだし、ソフトウェアあるいはネットワークという巨大な知的構造物は、ものを持ち上げたり運んだりする力仕事ではなく、人間の知性や感性の部分に直接的にタッチしてくるものである。
これらの前提を並べれた上で見えてくることに多言を要しないと思うが、デザインと工学を「融合」(あるいは「統合」、いずれにしても表現としては適切でない気が多々するが)した、新しい「学」を構想することは必至のことであると思える。
ここでデザインと工学以外の分野を排することを意図していない。私の意識が回らないだけで、もっと多くの分野も関係性があるのだと予感的に思う。
この言明の難点は、そういうことは昔から多く言われてきたし、行われても来たのである、という切り返しに対して、あまり説得力がないことである。ということで、さらに今までとはどう違うのかを、はっきりさせていかねばならない、と思う次第であるが、今はここまで。
(100711)
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