2011年10月25日火曜日

デザインは時間がかかる


他の仕事でもそうなのかも知れないけれど、デザインで最も時間がかかる部分はなにか。それは何かを「決める」ということだと思う。デザインは何かを創造しているように見えるかも知れないけれど、実際にやっていることは何かを「決める」あるいは、何かを「選ぶ」という行為だ。
100のアイデアを出すことは大変だけれど、100あるアイデアの中から、もっとも適切なものを決めることがむずかしい。どれが適切かを決めるために、デザイナーはどうするか。直感で選ぶ、のではなく一々有望なものを表現してみて、目で見て比較する、というプリミティブな方法をとるのである。本当にそれでよいのか、を自分自身に問いかけるために、面倒くさくても表現してみなければならない。
デザイナーは直感を大切にしているし、実際直感はとても大切なものだけれど、直感もときに裏切ることをデザイナーはよく知っている。それに表現してみると、新たな発見ができるし、デザイン自体が洗練されていく。また表現が別のアイデアを誘発する。
そんなこんなをしていることに、時間がとてもかかる。いくらあっても足りない。(デザインの学生を見ていると、そこにぜんぜん時間をかけていなかったりするのだけれど。)でも、やっていることはアイデアを出して、どれがベストかを決めている、に過ぎない。
せっかく完成したデザインのデータが壊れてしまって、たとえば20枚の画面の絵を描き直さなければならない事態になったとき、20もあるんじゃ大変ですね、一週間はかかりますか? などと聞かれる。しかし一度描いた絵なら、20の画面くらい描くのはじつはそれほど時間はかからない。もうすべては一回決めたのだから、思い出すのに多少は時間はかかるかも知れないが、どう描くのがベストか悩まない分、時間は何分の1か何十分の1で描くことができる。(もし描けないとしたら、元から戦略的、意識的に描いてないということだ。偶然に頼って描いていれば、再現に時間はかかるかも知れない。)
だから逆に、すべてを吟味しなければならないから、はじめに描く絵は非常に時間がかかる。え、これだけ時間をかけてこんな小さなアイコン一個しか作れないの、と言われることもある。
(111015)

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