2011年4月6日水曜日

デザインオーダー

知り合いの若手デザイナーが、デザインに対する適切なオーダーがなされないことに憤っていた。でももう長くデザインという仕事をしているけど、適切なオーダーが出されたことって、本当に数えるほどしかない。ある程度の的を射たオーダーが出されるケースというのは、だいたい元デザイナーかデザインに関係することが長くてデザイナーの生理がわかっている人にかぎられる。
私の到達した結論は、デザインのオーダーは、デザイナー自身が出すものだということ。もちろんなんらかの守らなければならない条件はあるかも知れないけど、デザイナーが必要としているデザインオーダーは、デザイナー以外には出せないものだと思う。
普通の感じとしてはせいぜい「なんか、こう、カッコイイやつやってよ!」というくらいだろうと思う。むしろ逆に事細かに、こういう感じでああいう感じじゃなくて、というオーダーが出てきたら、それこそ注意すべきだと思う。そのまま真に受けてデザインして何度痛い目にあったことか(思い出したくもないけど)。ちょっと悲観的すぎる表現をしてしまったかも知れない。うまくいっていたら、それはそれでもちろん結果オーライだけど、職業として考えるなら、細心の注意を払っといた方がよいよね。
そういういい加減なオーダーを責めてはいけないと思う。デザイナーはそれも含めて、「こんな感じのものが欲しいんでしょ、それはこれじゃない?」と、デザインを示さなければならない。言い方はともかく、内容としてはそのように、相手の心の指し示すところを、感じて、考えて、形にして差し出す、そこまでを含めて「デザイン」と呼ぶのだと思う。完璧なオーダーが出てきて、それを形にしてあげて差し出す、というのは幻想のような気がする。
前に一休さんの話をしなかったかな。屏風の虎が暴れ出すって言う話。困った坊さん達が、一休さんに救いを求め、一休さんは虎退治を引き受ける。屏風の前で、たすきを締めて長刀を構え、「じゃあ、退治するから虎を屏風からだしなさい」という。でも、どうして出てくるのかわからないことに困っているんだから、坊さん達も途方に暮れる...、といった話だった(違ったかな)。つまりなんかまずいこと(あるいは、いいこと)があることはみんな知っているんだけど、正体がわからないことが問題だと言うこと。デザイナーはこの一休さんのように、デザインしてあげるからオーダーをここに出しなさい、といっていてはいけないのだと思う。(もちろん一休はそのこともわかっていてるんだけど)
自分のあこがれている「優れたデザイン」のことを考えてみればわかると思うけれど、だれかのオーダーで作った「優れた」と名の付くデザインなんてないのじゃない?

(110406)

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